久しぶりに思い出したこと

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サークルの先輩で、背が高くてお洒落で髪がちょっと長くてモデルみたいなのに酒を飲むと裸になるような最悪で最高な人だった、あと彼女には一途だったのでかわいかった。彼女も同じサークルの先輩で、彼女の方が一つ年上だった。


先輩の彼女はかわいかった。たぶん、学校一かわいかった。大学のミスコンに出るような中途半端な女子とは違ってた。実写版バニラのにおいがするタイニーな女の子だった。でもちょっと捻くれていた。そこもまた可愛かった。



二人が一緒にいる時間のことはあんまりよく知らなかったけど、サークルに行ったときに二人が並んでるだけで幸せだった。

たぶん、わたしはちょっと先輩のことが好きだったけど、"好き"と思うことすら烏滸がましいくらい二人は完璧だった。わたしが及ぶ点など一つもなかった。



わたしは途中からサークルに行けなくなって(理由はまた後日)、なんとか最後の、先輩の彼女の卒コンには参加しようとありついた。その頃には、先輩と先輩の彼女が別れたことはなんとなく知っていた。信じられなかったけど、それでもわたしは二人のことが好きだった。(先輩の彼女が就職で関東に行くというので、きっとそれが原因なのだと思っていた)




先輩は卒コンに来なかった。先輩の彼女が最後だというのに、二人が一緒にいるところを見ることができないのは悲しかった。わたしは一人で勝手に、二人の幸せな未来を期待していた。


二次会のカラオケの途中で、ほかの先輩が「あいつ今から来れるって」と言った。わたしは内心嬉しかった。別れたと言ったって、きっと今まで通りの二人が見れると思った。



そのあとしばらくして先輩が部屋に入ってきた。後ろに女の子を連れて。わたしは混乱した。というかみんな混乱した。

無敵だったはずのバニラのにおいがするタイニーな女の子に、勝てる女の子がいたなんて。


先輩は彼女でーすみたいな適当なことを言ってヘラヘラ笑ってた。酔ってた。彼女は彼女で居心地が悪そうに先輩の横にちょこんと座っていた。吐き気がした。新しい彼女は背が高くて病気みたいに手足が細長くて、短い髪の毛は金色だった。目が大きくて、外国の少年みたいな女の子だった。



わたしだけが泣きそうな気持ちになって、でも周りの人はお構いなしにアホみたいな歌を歌い続けてた。そんな空気に耐えかねて、金髪の少年は部屋を出て戻って来なかった。でも誰も気にしてなかった。先輩の(元)彼女といちばん仲のいい先輩が、「なんであんなの連れてくるの?バカ」とか言ってたけど、先輩はまた笑ってた。そして酔ってた。わたしも(バカ!)と思った。



どれだけかっこよくてもこんなに惨めになれるんだと思った。当てつけみたいなこと、しなくていいのに。最低。



先輩の(元)彼女はあんまり気にしてない様子で、シャングリラを歌った。二人が付き合ってるときは、彼女が歌うと先輩が踊って、先輩が抱きつこうとするのを嫌がられたりしてじゃれてるのが好きだった。これはよく覚えてるんだけど、僕のことダメな人って叱りながら愛してくれ、のあと、歌が途切れた。先輩の(元)彼女は泣いてた。卒コンでお別れの挨拶のときも泣かなかったのに、二次会で彼女を連れてきた元・彼氏(クズ)に対する皮肉みたいな歌詞で泣いてた。地獄だった。





わたしは、その1日で先輩のことも、先輩の(元)彼女のことも嫌いになった。ガラスケースの中で勝手に大切にしてきた二人の姿は全部虚像だったのかもしれない。




最後に、先輩の(元)彼女が結婚したことを聞いて、わたしの中でこのサークルの記憶は完結する。なんとなく、最後の最後まで先輩と先輩の彼女が一緒になることを期待してたような気がする。それがわたしの中の希望でもあった。




もう、今ではほとんど思い出さない。ただ、わたしの記憶の中でだけ先輩と彼女は二人で幸せになったことにする。

終わりが見えなくなったけど、わたしの記憶の一部の記録でした。お幸せに。