生活再建プロジェクト
未練を軸に生きてしっかり自立してたのは、好きな人に偶然出会ったときいつでも100点でいたかったから
地下鉄、彼が好きそうなお洒落なカフェ、似た色の車が通ればさりげなく前髪を整える。でも、この半年間、結局一度も出会ったことはなかった。だから、ずっと幻想を抱いてられたし、ずっと100点の自分でいられた。
幻想は日を追うごとに美しくなって、手に入らないことがもどかしかった
あの日あの時間、あのカフェに入って鉢合わせたのは奇跡だった
わたしは友人と仕事帰りにふらっと寄っただけで、その日はたまたま100点じゃなかった。だって、ここはわたしの職場の近くだし、この領域で出会うことは想定外だったから
心臓がある、ここにある
カウンターに座っていて後ろを向いてたけど彼だってすぐにわかった。何度その背中を思い出の中でなぞったか、分かんないでしょ
喜びより、このまま怨念で殺せそうだった
だって、隣にはだれかいた形跡があった
飲みかけのコーヒー
こんなカフェに男二人では来ないよね
たまたま座った席は彼と背中合わせになる席で、でも彼が待つのはわたしじゃなくて隣の女の子
でもまだ好きだった
わたしは友人にラインしてわたしの後ろにいる人が誰なのか説明した。ピンと来てなかった。
だって、わたしがその人のこと好きだなんて言ってなかったもん
でも、そんなことどうでもよくて、トイレから戻ってきた女の子がどんな感じか聞いた。
わたしは必死だったのに、友人は呑気に「あー、うーん、ボーイッシュな感じ?」
そーうーじゃーなーくーて
可愛いとか可愛くないとか、どんな服着ててどんな表情でそこにいるのかって言ってるの!
「ごめん、もうここ出よ。」
友人は困ったような慌てた感じで店を出て、わたしは役に立たない友人の情報より自分の目で確かめたくて後ろを見た。
彼も、こっちを見た。
わたしの声に気付いたんだろうか。
めっちゃ睨んじゃったじゃんよ
わりと近距離で
女の人のほうは後ろ向いててショートヘアだってことしか分かんなかったけど、彼の方はなんか顔がデレデレしてて、背中合わせになってるときもこちらに気付きもせずに彼女の写真を撮ってる音なんかが聞こえてた
出る幕ないっつーか、なんつーか
あれ?こんな人だったっけ
わたしが好きだった人
あの日あの時間、あのカフェに入って鉢合わせたのは奇跡だった。
未練が終わるのって突然なんだと初めて知りました
わたしは彼のこと何にも知らなくて、情けなかった
幸せになってねとか綺麗なこと思わないけど、ちゃんと生きてたんだなって、わたしも彼も
当たり前のこと思った