美化される思い出たち

一度、憎くて憎くてたまらなくて捨てたんだから、一生恨んで行くって決めた。

のに。

失ってから気づく大切さなんて使い擦られた言葉だけど、それに近いものなのかなぁ。いつもいつも心配ばかりしてきてうっとうしい、お母さんみたいな存在に、なんだかないとないで寂しい とか都合よすぎて笑える。

一度味わったことがあったから、もう次はないって確信があったんだけど。彼と別れたのは今回が初めてではなくて、付き合ってすぐの頃にも一度別れたことがある。大嫌いだと思ってわたしから別れを告げたのに、１ヶ月もすると恋しくてたまらなくなった。別れたくせに、別の人と付き合い始めたらってことを考え出したらいてもたってもいられなくて連絡を取って、それからなんとなくよりを戻した。

もう同じ思いをしたくないと思って、それからはだいぶん素直に付き合っていけてたと思う。

それから数年後にまた同じことを繰り返して、今度こそ徹底的に嫌になるまで付き合ったんだから、また好きになることはないと思ってた。思ってた…っていうか、好きになったわけではないんだけど。正直、ここまで彼に対する憎悪の気持ちが無くなったのには驚いている。

あのときわたしは彼の一挙手一投足が気になるようになっていた。わたしに向けられる一心の愛がうっとうしくて重くて怖くて仕方なかった。

別れてからはそれはもう思い描いていた楽しい人生だった。だれと遊びに行っても、部屋でゴロゴロしていても、なにも干渉されない。わたしのやりたいようにやるだけ！

洗濯物がたまっても、朝方にお風呂に入っても怒られない。そのかわり、部屋の片付けをしてもだれも褒めてくれないし、会社から帰って一歩も動けないまま泣いていても、抱きしめて慰めてもらえることもない。

ふと、弱ったときに彼を求める自分がいる。でも、やっぱり好きじゃないなと思う。そして、彼に甘えようとする自分のことは、もっと好きじゃない。

酷いことを言われて、傷ついて、耐えてきた恋愛だったのに、精神が弱ると、それでもいいから今だけ慰めてほしいと思う。

早く自立したい。まじでいろんなものに、人に、期待しなくなって、悟りたい。生活の中の８割はいい感じなんだけど、ときどき憂鬱が襲ってきて身動きが取れなくなる。そんなときに、まぁそんな日もあるよね〜って感じに自分を落ち着かせてあげたい。

彼のことは、いい思い出になりつつあってよい傾向かなと捉えています。先月、彼に事務連絡をしたときに、彼ももう前を向いてるのを感じた。たった数文字のやりとりから、わたしがまだ彼と付き合う前の（何年も前の話だけど）、片思いしてたときの彼を思い出した。それで、彼の世界からわたしがいなくなったんだって分かった。

別れてからもう何ヶ月か経つけど、漸くお互い別々の方向を向いて自分の人生を生きてる気がする。わたしは当分の間一人でいいと思います。たぶん、いろんな人を好きになるけど。

恋愛より、勉強して、今は、これからちゃんと生きていけるようになりたい。